ドイツ・トラウンリバー釣行



 

フライフィッシャーにとって憧れの川、ドイツのトラウンリバーへ。

 

今回トラウン・リバーを釣る機会に恵まれた。いまやヨーロッパのみならず世界的に有名なトラウン・リバーだが、トラウンと一口に言っても、トラウンとは本来“川”の意味であり、現地にはいくつかの“トラウン”リバーが存在する。ドイツを流れるドイチ・トラウン、ヴァイセ・トラウン、だがその内最も有名なものは、かのシャルル・リッツも愛したオーストリアのザルツブルグ近くのグムンデン地方を流れるグムンドナー・トラウンだろう。この川での釣りに関する最初の記述は実に1360年に書かれたものだ。

 
 
トラウンとは本来「川」の意味とのこと。ってことはトラウンリバーではオカシイかな。チゲ鍋的に。

 
 

オーストリア政府により長年管理されてきたこの川は、1997年についに自身での管理をあきらめ、リースで民間に任せることを決めた。その際の入札でこの川の管理を任されたのが、私の友人だった。彼ら自身でライセンスを発行し、川を管理し、魚を育む。この方法は、日本の河川行政にとって、また釣り人にとっても非常に興味深いものだろう。

 

1968年に作られたダムから始まるこの全長16キロにもおよぶこの区間は、大きく4つのセクターに分けられ、それぞれ多種多様な景色を見せる。ストリーマーで釣るような大場所から、ニンフィング、繊細なドライフライでのハッチマッチの釣りまで、ありとあらゆる釣りが楽しめる。

 

近年日本でも問題となっているが、彼の地でも鵜の増加(正確にはこの地方にとっては南下)はやはり依然として問題となっているらしい。何らかの対策を講じればなどと考えるが、鵜は非常に賢い鳥なのだ。夜にナイトスコープで撃つという手もあるだろうが、ドイツではそれが禁止されているのだ。鵜(Cormorant)はその単語に貪欲という意味もあるとおり、非常な大食漢である。ある人の推定では一羽の鵜が一日に食べるもしくは傷つける魚の量は実に一キロにも達するとのことだ。単純に100羽いれば日に100キロ、500羽いれば日に500キロの魚が川からいなくなるのだ。被害がいかに大きいかお分かりになるだろう。

 

川の流れは重く、静か。

 

いとも簡単に魚をかけるルディ。僕がこれまで見たフライフィッシャーの中でも三本の指に入る凄腕。世界中を飛び回って釣り歩いている。

 

今回は一足違いでパタゴニアの創業者のイヴォン・シュイナードが来ることになっていた。残念。

 

ここで大きなドラマが僕に起きた。場所は最初に入ったドイチ(英語名ジャーマン)・トラウン。ここは私のお気に入りだった。フラットな流れで、魚を見つけ、そして狙っていく。魚を探しながら、ゆっくりと静かにダウンで釣り下っていく。

 

いくつかのポイントを釣ったあと、大きな岩が沈むポイントにきた。ゆっくりとそのポイントに近づく。友人が急に私を制する。

「ストップ!あの魚みえるか?」 

「???」見えない・・・・。じっと見つめる・・・またじっと見つめる・・・「見えた!」

どうやら表層には興味はないようだ。見た目にはフラットな流れだが、重く速い。ここはビーズヘッドの小さなニンフだ。小さなヤーンのインディケーターをつけて流していく。

 

一投目。反応なし。二投目。すっとインディケーターが入った。軽く合わせる。

「でかい!」「絶対逃がすなよ!でっかいグレイリングだ」

「オーケー、わかってるよ」

「ゆっくり、ゆっくり、グレイリングは口が弱いから」


普段は落ち着いている友人の様子がやけに慌ただしい。「カメラを用意してくる、絶対ばらすなよ!」「わかった、わかった」私は慎重にやりとりをした。私は幸運にもその魚をランディングすることができた。

 

「でかい!このサイズのグレイリングはここでもめったに釣れないぞ」

「へー、そうなんだ」

私はいまいちその価値を分かっていなかった。しかもこれは私にとって初めてのグレイリングなのだ。友人が夢中で何枚も何枚も写真を撮ってくれている。

「メジャー持ってるか?」

「ああ、あるよ」51センチ。

友人がなおも驚く。

「グレイリングは、40センチと45センチ、45センチと50センチではその意味が大きく違うんだ。そして50を超えたらその一センチがまた大きい」

「地元のやつでも50センチを越えるグレイリングを釣ったやつはめったにいないぞ」

「みんな48センチとか49センチに泣いてるんだ」

へー、ヤマメでいう泣き尺ってやつね。

「51センチのグレイリングっていったらそうだな、海でいうパーミットに匹敵するかな」

「なに!?」

繰り返し繰り返しの説明に私はようやくその意味に気がつき始めていた。移動の車中ももちろんその話題。楽しく笑い合った。そして私はその意味を悟ったのだ。数字そのものに意味があるとは私も思わない。ただそこまで大きくなるまでにその魚が乗り越えてきた数々の困難を思い、その狡猾な魚を釣ることが出来たことの意味を思うのだ。

 

 

翌日は一路オーストリアへ。と言っても車で1時間ぐらい。

 

かのシャルル・リッツの常宿。こじんまりとしたかわいいホテル。

 

川はやや大場所が続く。

 
 
ここでは良いレインボーが出た。シャルル・リッツも釣った、かのグムンデンでも釣れたことに感慨もひとしお。
 
 
 
緑の深い森。
 
 
 
 
休憩に川を上り、森を抜けると、
 
 
 
綺麗なロッジが現れた。ここで温かいコーヒーを飲んで、楽しい旅もここで終わり。
 

 

フライフィッシャーにとっては伝説的な川「トラウン」は現在も美しく守られ、素晴らしい場所だった。

 

 



T2Z

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